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2004.11.01

『隠し剣 鬼の爪』

山田洋次監督。原作、藤沢周平。2004年邦画。人情時代劇映画。出演、永瀬正敏、松たか子、吉岡秀隆、小澤征悦、田畑智子、高島礼子、倍賞千恵子、田中邦衛、光本幸子、田中泯、小林稔侍、緒方拳。
日本映画界の名匠・山田洋次監督が再び挑戦した時代劇第2弾。山形県を舞台に日本人の情感に訴える良質な作品です。前作『たそがれ清兵衛』の姉妹作と言えます。低迷する邦画にあって安心して観れました。

しかし、チャン=イーモウ監督の『LOVERS』に感じたように自らの策に溺れてしまった印象を受けました。原作は「隠し剣鬼ノ爪」と「雪明かり」であり、これらを脚本で一本に仕上げていますが、1つのストーリー展開としてはどうしても無理がでました。武侠と純愛の2つのテーマをつなぐために必要と思えない場面が登場しますし、言わせるべきでないセリフが数多く出てきました。従来の山田洋次監督作品では絶対に語らせなかったセリフです。前作で逃した米国アカデミー賞を意識されたのでしょう。米国人にもわかりやすいものに仕上げようとしたため、邦画としての奥ゆかしい味のある表現方法を後退させています。また、配役において意外だったのが緒方拳の使い方です。最後まで納得できませんでした。松たか子がはまり役で観客が共感できる演技をしていたのと対照的でした。世界のマーケットを意識したのかもしれませんが、あまり欲張る必要はなかったのではないでしょうか。才能のある監督において武侠映画は表現の自由度があるため、力が入りすぎるのかもしれません。殺陣については、前作よりも弱い感じです。
今回の映画はどちらか一方のテーマだけで撮っても名作になりえたと思います。特に純愛がテーマの坦々とした日常における”男らしさ”とはかくあるべきという物語に挑戦していただきたかったと思います。[丸の内ピカデリー1](お薦め度★★)

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 今日はテレビでやっていた「隠し剣 鬼の爪」を観ましたよ!後半だけ。  幕末、東北の小さな藩。  下級武士の永瀬正敏は妻を亡くして一人身で暮らしています。  そこに幼い頃、奉公としてやってきていた松たか子と再会します。嫁いでいたはずの松ですが、嫁ぎ先での酷い仕打ちに永瀬は強引に自宅に連れ帰ってしまったのでした。  そんな時、江戸では謀反を起こしたとして剣術の兄弟弟子の狭間がつかまります。  松との同居は周りから白い目で見られ、狭間との関係も疑われる永瀬ですが…。  究極奥義”隠し剣・鬼の爪”... [続きを読む]

受信: 2009.02.08 08:12

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藤沢周平の人気剣豪小説「隠し剣」シリーズの中の「隠し剣 鬼の爪」と「雪明り」を基に、山田洋次監督が映像化した本格派時代劇もの。出演は、永瀬正敏、松たか子、吉岡秀隆、小澤征悦、田畑智子、高島礼子、倍賞千恵子他。 <あらすじ> 幕末の東北。海坂藩の平侍、片桐宗蔵(永瀬正敏)は、母と妹の志乃、女中のきえ(松たか子)と、貧しくも笑顔の絶えない日々を送っていた。やがて母が亡くなり、志乃ときえは嫁入りしていった。ある日宗蔵は、きえが嫁ぎ先で酷い扱いを受けて寝込んでいることを知り、やつれ果てたきえを背負い連れ帰... [続きを読む]

受信: 2009.04.15 22:11

» 隠し剣 鬼の爪 [dianyingmi[電影迷]映画のレビュー]
幕末の東北。海坂藩の平侍、片桐宗蔵は、母と妹の志乃、女中のきえと、貧しくも笑顔の絶えない日々を送っていた。やがて母が亡くなり、志乃ときえは嫁入りしていった。ある日宗蔵は、きえが嫁ぎ先で酷い扱いを受けて寝込んでいることを知り、やつれ果てたきえを背負い連れ帰る。その頃、藩に大事件が起きた。かつて、宗蔵と同じ剣の師範に学んだ狭間弥市郎が、謀反を起こしたのだ。宗蔵は、山奥の牢から逃亡した弥市郎を切るように命じられる。(goo映画より.画像も) ----- 永瀬正敏、松たか子ら出演。邦画はいつもオススメし... [続きを読む]

受信: 2009.05.17 11:50

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