『物語消滅論-キャラクター化する「私」、イデオロギー化する「物語」』
物語消滅論(角川oneテーマ21 C-83) | |
大塚英志〔著〕 出版社 角川書店 発売日 2004.10 価格 ¥ 780(¥ 743) ISBN 4047041793 bk1で詳しく見る |
『物語消費論』の続編にあたります。1990年代からの世の中の事態を概略的に捉えるという意欲的な評論です。物語を扱うだけあって映画や小説についての造詣が深く、多くの事例が登場します。この著者の論文を読むのは初めてでした。現代評論について慣れていないこともあり、全体的に難解さを感じましたが著者が主張しているテーマについては一理あると感じました。特に”物語”を工学的に作成できるだろうという考えは理解できます。すでにハリウッド映画界において創作支援ソフト「Dramatica」が実用化レベルにあるとの報告には、ハリウッド映画の持つセオリー通りの物語はすでに何となく意識して観ている事実があります。物語を工学的に考えることが弱い日本映画はストーリーテリング(Storytelling)が脆弱である問題点があり、ハリウッド映画のようにストーリー創作の分業体制に無いことの裏付けになります。この点は韓国映画と比較しても弱いことが明らかです。
それにしても著者の邦画批判は凄まじく、シナリオライティング(scenario writing)については、『ファイナルファンタジー』の坂口博信や『イノセンス』の押井守、宮崎駿アニメにいたるまで一刀両断しています。ここまで言い切る批評は他ではなかなかお目にかかれません。
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