岩波新書のハズレ
岩波新書を読んでハズレを経験したことはほとんど記憶にありません。自分にとって難しすぎて読むのを断念することがあっても読破すればそれなりに学ぶものがある新書のブランドとして絶対の信頼感があります。しかし、齋藤孝著『コミュニケーション力』を読んで例外があることに気付きました。明治大学文学部教授の齋藤孝氏はNHK教育テレビ「にほんごであそぼ」の企画・監修を手がけられている才人で、毎月複数の著書を量産している超売れっ子です。彼の著作物を読んだのは初めてです。多くの書籍を執筆しているため読みやすいのですが、内容が乏しくがっかりしました。コミュニケーションは解釈が広範に及ぶため利用シーンを特定して論じなければ焦点がボケてしまいます。にもかかわらずコミュニケーションの定義を明確にしないままにコミュニケーション力を紐解くため、著者の体験に基づく挿話が並べられただけで普遍性を持つものになっていません。本章で紹介されている数多くの教育実践されていることについて深く考察していただいたほうが読者に役立ったのではないかと感じました。率直に言ってこの本を担当した編集者の力不足でしょう。有名な著者であっても言いなりにならず編集者が作品をコントロールしないといいものになりません。
信頼の岩波新書といえども安易に企画されたものがあることが今回わかりました。人気の著者で岩波ブランドであっても今後は注意して選択したいと思います。
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