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2005.04.30

『ふくろう』

監督・脚本、新藤兼人。2003年日本。コメディホラー映画。出演、 大竹しのぶ(母)、伊藤歩(娘)、木場勝己(ダム労働者)、柄本明(ダム労働者)、原田大二郎(ダム監督)、六平直政(電気屋)、魁三太郎(電気屋上司)、田口トモロヲ(水道屋)、池内万作(巡査)、蟹江一平(役場職員)、大地泰仁 浩二(幼なじみ)。

東北のある開拓村で最後に残った一家の母と娘が生活に困って売春で得た金で村から出ようとするヘンチクリンな物語です。新藤兼人は映画監督として様々な功績があった方だと思います。しかし、この駄作は理解できません。「入植」や「開拓村」など数十年前に使われていた言葉が繰り返されます。主人公の母娘は開拓村での生活を呪っており怒り心頭ですが、何も伝わってこない。作品の前提として現代の設定なのか過去なのかわかりません。というか全く設定作りを放棄しています。売春を描いていながら全く欲情を感じさせない展開はコメディのようだといえばそれまでですが、実はホラーなのだという全体を通してのロジックが壊れていて何をテーマにしているのか、何を訴えたいのか、わけがわかりません。後半のクライマックスでの巡査と役場職員、幼なじみの若手俳優3人の下手さ加減にはあきれました。
(お薦め度☆)

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『ブルース・オールマイティ』

監督、トム=シャドヤック。2003年米。原題『BURUCE ALMIGHTY』。ファンタジーコメディ映画。出演、ジム=キャリー、モーガン=フリーマン、ジェニファー=アニストン。

神様に悪態をついたら、1週間神様の力を得たアンカーマンを目指す地方局レポーターのドタバタコメディ映画です。全知全能になりながら目的はあくまでライバルのアンカーマンを追い出してその座を奪うという小さな世界でのセコイ出世物語です。このナンセンスさがコメディたる真骨頂なのでしょうが、ハリウッド映画のネタ枯れの典型といえます。主題にこだわらないのであればそれなりにまとまったセンスの良い作品ではあります。
(お薦め度★★)

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2005.04.29

『油断大敵』

監督、成島出。2004年日本。フューマンドラマ映画。出演、役所広司、柄本明、夏川結衣、菅野莉央。

妻に先立たれて幼い娘を育てる泥棒専門刑事(役所広司)が大泥棒(柄本明)を偶然捕まえたことによって、彼との長期にわたる奇妙な交流が続いてゆく物語です。演技派同士のやりとりは味わいがあります。娘役の菅野莉央は『仄暗い水の底から』の黒木瞳の娘役でも登場しており光る子役です。刑事が主人公でありながら娘との二人きりの生活に重点が置かれてしまい、刑事としてベテランになってゆく成長を描いていないため、後半の大泥棒との再開もベテラン刑事と大泥棒との対決とはならず、お互い年をとっただけでなあなあな関係にしかみえません。実話に基づいたようですが、日本人同士の情緒的な部分が強調され過ぎて緊張感が無く、あまりに平凡な日本映画でした。
(お薦め度★★)

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2005.04.28

『犯罪者プロファイリング』

犯罪者プロファイリング
渡辺 昭一
角川書店 (2005.2)
通常24時間以内に発送します。

著者は元科学警察研究所の犯罪行動科学部長で、日本の犯罪者プロファイリングの第一人者だそうです。犯罪者プロファイリングとは、事件に関する情報の分析から可能性の高い犯人像を導き出す手法です。日本における犯罪者プロファイリングの研究はFBIの研究から20年遅れて1995年から科学警察研究所で始まりました。契機になったのは1988から89年にかけて起きた宮崎勤による連続幼女誘拐殺人事件だそうです。犯罪者プロファイリングは映画やTVドラマのように事件を解決できる特効薬ではなく、捜査員が利用できる道具のひとつに過ぎないことが理解できます。臨床的プロファイリングの「FBI方式」と統計的プロファイリングの「リバプール方式」があり、罪種が限定されない「リバプール方式」が日本の実情にあっているようですが、いずれも外国の手法であり文化的な相違から日本独自の手法を開発しなければならないようです。

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2005.04.27

『英語完全征服』

監督、キム=ソンス。2003年韓国。英題『Please Teach Me English』。ラブコメディ映画。出演、チャン=ヒョク、イ=ナヨン。

あの時代劇スペクタクル巨編『MUSA-武士-』の監督の最新作であるならば観なければならない。どんなことがあっても。興味を引かないタイトルとキャスティングであったとしても関係無い...。それにしても硬派な作品の次がラブコメとはギャップが大き過ぎますね。守備範囲が広すぎです(笑)。感想は普通に良かったです。まだ、2本目ですがキム=ソンス監督の作風は好きですね。全体の骨格がしっかいりとしていて作品の世界観に無理なく入っていけます。英語が苦手なのは日本人と共通しているようで背景なり苦労する描写が共感でき結構笑えました。イ=ナヨンは初めて観る女優ですが、ちょっと風変わりな二枚目半を見事に演じています。目が大きくて美形でスタイルも良くてかわいい不思議な魅力を感じます。『火山高』、『僕の彼女を紹介します』のチャン=ヒョクは無難にコメディを演じていました。上手い役者だと思います。この映画は可愛らしく微笑ましいので今後何回も観たくなりそうです。そうそう、イ=ボムスがちょっとだけ友情出演(?)しました。[東劇>JCB200円割引]
(お薦め度★★★)

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2005.04.26

札幌さむいです

21時半の札幌は息が白くなるほど寒いです。日本には影響が無いものの台風3号が発生している時期に不釣合いですね。

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2005.04.25

ロードレース世界選手権 MotoGP第1戦スペインGP(4/10)

スペイン南部アンダルシア、ヘレス・サーキット。
27周を21人のライダーが500ccのマシンで競う二輪レース。

優勝はバレンティーノ=ロッシ(ヤマハ)、2位セテ=ジベルーノ(ホンダ)、3位マルコ=メランドリ(ホンダ)。日本人ライダーは5位に中野真矢(カワサキ)、8位に玉田誠(ホンダ)。

序盤から先頭の4人が抜け出し、少し遅れて5番手を中野選手が走行。地元スペインのセテ=ジベルーノがトップをキープし続ける。ラスト3周でピッタリと2番手につけていたバレンティーの=ロッシがトップに浮上する。すかさずジベルーノが抜き返し再びトップに立った。更に2度ポジションを入れ替えて壮絶なバトルが展開する。そして最終コーナーでロッシがわずかに空いたインをさし、ジベルーノの身体とマシンに接触。ジベルーノは押し出されてコースアウト、転倒せずコースに戻るものの後の祭り。ロッシが前代未聞の劇的な勝利を収めた。表彰台では左肩を痛めたジベルーノが恨めしそうにロッシを睨んでいた。自動車レース以上に生々しいものがある。
今まで様々なバトルを観たが、こんな凄すぎる攻防は観たことが無い。最終コーナーまで勝敗がもつれ込んで、最後は接触して押し出してしまうといレースは初めてだ。二輪ならではの醍醐味。たまらない。

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2005.04.24

F1第4戦サン・マリノGP

イタリアのイモラサーキット。
正式なコース名、アウトドローモ・エンツォ・エ・ディーノ・フェラーリ。

優勝、フェルナンド=アロンソ(ルノー)、2位ミハエル=シューマッハ(フェラーリ)、3位ジェンソン=バトン(BARホンダ)、4位アレキサンダー=ブルツ(マクラーレンMercedes)、5位 佐藤琢磨(BARホンダ)。アロンソは3連勝。

ポールシッターはキミ=ライコネン(マクラーレンMercedes)、アロンソ。2列目バトン、マーク=ウェーバー(ウィリアムズBMW)。3列目ヤルノ=トゥルーリ(トヨタ)、佐藤琢磨。ミハエル=シューマッハは公式予選2回目をミスして14番手。

スタートダッシュして、ポールポジションのライコネンが序盤にもかかわらず独走態勢に持ち込むものの数周でマシントラブルによりリタイア。シューマッハが驚異的な速さで先頭集団にあがり、アロンソ、バトン、シューマッハの展開になる。レース後半にはバトンを抜き去り、残り10周くらいからアロンソを攻め続ける。しかし、なんとかシューマッハをかわしてアロンソが1位でチェッカーフラッグ。

フェラーリとBARホンダが復活。何と言ってもシューマッハの次元の違う速さには驚いた。

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『キューティーハニー』

監督、庵野秀明。2004年日本。アニメ実写版映画。出演、 佐藤江梨子(キューティーハニー/如月ハニー )、市川実日子(秋夏子)、村上淳(早見青児)、及川光博、小日向しえ、片桐はいり、新谷真弓、手塚とおる(執事)、篠井英介(シスター・ジル)、京本政樹、吉田日出子。

素晴らしい映画です。同じ実写版で永井豪原作の『デビルマン』が大コケしてましたので、『キューティーハニー』も期待していませんでした。庵野監督は自ら映画において劇場版『新世紀エヴァンゲリオン』など何故か期待を裏切るものをつくり続けており、この作品でも同様に外されると考えていました。しかし、全くの杞憂に終わりました。超一級の感動エンターテインメントです。原作のマンガとは違う映画ならではの世界観を見事につくりあげています。脚本、演出、編集すべてにおいて文句無しです。キャスティングは非常に納得が出来ました。どのキャラクターも適役を選んだといえるでしょう。特に刑事・秋夏子役の市川実日子は好演しています。若手個性派女優のひとりとして今後も大いに活躍される方だと思います。
(お薦め度★★★★)

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『名誉毀損裁判 言論はどう裁かれるのか』

名誉毀損裁判
名誉毀損裁判
posted with 簡単リンクくん at 2005. 4.24
浜辺 陽一郎
平凡社 (2005.1)
通常24時間以内に発送します。

ブログの普及によってインターネット上で言論を簡単に発表することが可能となりました。これはとりもなおさず「表現の自由」の拡大とそれに伴うトラブルを増加させることは間違いなく、また、同時に名誉を脅かされる機会が格段に増えることを示しており、誰もがトラブルの当事者になりえます。今はまだブログにおいての名誉毀損されたというニュースは耳にしていませんが、今後は掲示板から舞台を移してブログでの発言が主役となって行くことが予想されます。このような時代において名誉毀損にならない表現はあるのだろうかということで本書を読みました。結論からするとそのような表現のガイドラインはありえないことがわかりました。名誉毀損罪は刑法第ニ三○条に犯罪と定められており、親告罪という性質のため告訴されてしまえば事件となってしまいます。ともかく名誉毀損に関しては表現者として発言する限り加害者になりえます。
ブログを発信し続けるということは常に名誉毀損が起こりえることを意識しなければならず、自分で表現したものの責任を負わされることを覚悟しなければならないということなのですね。

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2005.04.23

『老人Z』

監督、北久保弘之。原作・脚本、大友克洋。キャラクター原案、江口寿史。1991年日本。アニメ映画。

初公開当時に観ていればそれなりに斬新に感じられた作品だったと思います。だだし、どうしても展開は『AKIRA』(1988)の二番煎じに映ってしまいました。ブラックユーモアによるコメディタッチでは壮絶な戦闘シーンに緊迫感と迫力が生まれません。
(お薦め度★★)

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2005.04.22

『花とアリス』

監督、岩井俊二。2004年日本。青春映画。出演、鈴木杏、蒼井優、郭智博、相田翔子、阿部寛。

キットカットのCMで鈴木杏が起用されているので彼女の作品なのだと思って観ていましたが、そうではありませんね。彼女よりももう1人の主役の蒼井優が光っています。『1980』で三姉妹の末っ子を演じていたときは単なる美少女で特別なものを感じませんでした。この映画での蒼井優は非常に魅力的です。彼女を取り巻く家族関係が複雑でありながら、本人は冷めているわけでもなく健気でもないライトなつかみ所の無い中途半端な気分を自然体で演じており並外れた才能を感じました。離婚した父親との久しぶりの時間は退屈な振る舞いで「いやらしい」と嫌悪感を素早くあらわにするものの、電車のホームでの別れの場面では離れがたい娘らしい情感を観ている者に共感を誘う見事な演技をみせます。また、最後のバレエは素晴らしいシーンとして記憶に残りました。透明感がありながら存在感もあるという相反する特質を持った注目すべき若手女優です。なお、いつも感じるのですが岩井監督作品はアフレコしないのでしょうかテレビで見る場合は音を大きくしないと声が良く聞き取れません。
(お薦め度★★★)

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2005.04.20

JAL1464便、松山空港に引き返す

10:45松山発、羽田行きJAL1464便に搭乗しました。旧JAS塗装機マクダネル・ダグラスMD-90です。出発が遅れ11:00ぐらいに離陸しました。水平飛行に移る10分頃に頭上から大きな風切り音が発生し、空調口から空気が吹き出しました。すぐさまキャビンアテンダントが異常音と空気の吹き出しを無くそうと前方客席頭上の空調口を何箇所か絞りますが、一向に改善しません。しばらくすると更に音が上がって機体が損傷して穴でも開いたような騒音になりました。音が発生して10分後(離陸して20分経過)に機長の機内アナウンスで雨によるダクト異常だろうと考えられる、松山空港に引き返すとの発表があり戻ることになりました。着陸10分前には異常音が消えました。再び機長の説明では「ダクト左右2つある内の左側のネジが外れて、圧縮空気が流れ込んだために発生した。これを閉じたので解消した。安全に着陸ができる」とのことでした。11:50に着陸しました。これって致命的な整備不良だと思うのですが酷過ぎますね。最近JALは国土交通省から度重なるトラブルやミスで注意されていてリスクが高い会社になっています。まさか実際身にふりかかるとは思いませんでした。嫌な経験になりました。

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2005.04.17

『クリムゾン・リバー2/黙示録の天使たち』

監督、オリヴィエ=ダアン。2004年フランス。原題『LES RIVIERES POURPRES 2 - LES ANGES DE L'APOCALYPSE』。サイコ・スリラー映画。出演、ジャン=レノ、ブノワ=マジメル。

新約聖書の黙示録に沿った連続猟奇殺人が発生し、12の使徒が次々に殺されていきます。警察の厳重警戒の中にもかかわらず事件を止められないという珍現象が連続し、犯人に銃弾を何発も当てても現場から逃げきられてしまいます。これほど外される演出ではおちゃらけてしまい、ラストは噴飯ものでした。
列車に乗った男』のジョニー=アンディが少しだけ登場します。彼の役どころに期待したのですが、1場面だけでした。これも期待を大いに外されました。フランス映画は本当に理解しがたいですね。(お薦め度★)

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『クリムゾン・リバー』

監督、マチュー=カソヴィッツ。2000年フランス。原題『LES RIVIERES POURPRES』。サイコ・スリラー映画。出演、ジャン=レノ、ヴァンサン=カッセル。

アルプス山中の連続猟奇殺人事件と無関係と思われるお墓盗掘事件の2つが結びつく意外性が、最後まで謎解きを困難にさせており、非常に良く出来た脚本です。舞台が雪山から街とスケール感があり映像の雰囲気も文句ありません。しかし、どうにもテンポが合わないのです。サスペンスに必要なドキドキ感が足りませんでした。(お薦め度★★)

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2005.04.16

『列車に乗った男』

監督、パトリス=ルコント。2002年フランス・ドイツ・イギリス・スイス。原題『L'HOMME DU TRAIN』。ヒューマンドラマ映画。出演、ジャン=ロシュフォール、ジョニー=アンディ。

初老の元教授と中年のアウトローの対照的な運命が交差する究極のダンディズムが展開します。香り立つ大人の映画です。主役の二人はフランスショウビズ界のスターで、お互い良い持ち味があります。特にアウトロー役のジョニー=アンディが魅力的で陰のある渋い男を存分に演じてくれています。フランス映画らしくラストは難解ながら余韻のあるものでした。(お薦め度★★★)

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2005.04.15

『なぜ人を殺してはいけないのか 新しい倫理学のために』

なぜ人を殺してはいけないのか
小浜 逸郎
洋泉社 (2000.7)
通常2~3日以内に発送します。

タイトルのイメージと新書という制限から内容は情緒的で抽象的な説明になるのかなという印象を受けましたが、バランスが非常に取れており極めてロジカルに構築されています。小浜逸郎氏は初めて読みましたが、相当にレベルの高い批評家です。素朴過ぎるがゆえに答えに窮してしまう命題に対して明確にわかりやすく回答されています。一つの事象に対して奥深い洞察力で様々な論点を俯瞰したうえでまとめあげる力量は尋常ではありません。他の著書も積極的に読みたいと思います。

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2005.04.13

『ロスト・メモリーズ』

監督・脚本、イ=シミョン。2002年韓国。サスペンス・アクション映画。英題『2009 Lost Memories』。出演、チャン=ドンゴン、仲村トオル、ソ=ジノ。

何たることでしょうか!!この映画を観るまで初代総理大臣「伊藤博文」が暗殺されていたこと、しかも韓国人だったことを知りませんでした。韓流ブームに乗っていながら、こんなにも歴史認識が薄っぺらいとは情けない。勉強不足を大いに反省しなければなりません。明治以降については小説『坂の上の雲』の感想を書いた通り、甘い歴史教育の被害者でもありました。
伊藤博文については「京都大学附属図書館 維新資料画像データベース」から一部引用します。

 日露戦争後大使として韓国に赴き、同38年第2次日韓協約を結び、韓国統監府を設置、初代韓国統監となって、韓国の国内改革と保護国化を推進し、ハーグ密使事件(1907)を利用して韓国皇帝を譲位させ、第3次日韓協約を結んで内政を掌握した。

 明治42(1909)年6月統監を辞し、四度枢密院議長となった。

 日本政府のなかでは対韓慎重派であったが、韓国民族運動の矢面に立たされ同年10月満州視察と日露関係調整のため渡満した折、ハルピン駅頭で韓国の民族運動家安重根(あんじゅんくん)に射殺された。年69。

この作品は伊藤博文が暗殺されず第二次世界大戦で日本が負けなかったらという近未来の時代設定をしています。舞台となる2009年の韓国は日本に支配されて、日本の文化の中で生きていかなければならない状況にあります。言語はすべて日本語で冒頭からたどたどしい発音の日本語が流れます。それはもう痛々しいくらい日本語での日常会話です。準主役の仲村トオルが演じる家庭での家族の姿は日本が戦争に勝っていたとしたら日本人から観ても"ありうる"と納得させる情景で、監督の想像力は素晴らしいものがあります。登場する自動車も左車線走行の右ハンドルで本当は日本映画ではないかと半信半疑で観続けました。この歴史的視点によるダイナミックなアイデアは素晴らしくSF映画としては格調高いものとなっています。最近も「竹島(独島の日本名称)問題」で揺れ動く両国ですが、韓国人から見た日本人像と日本人から見た韓国人像には根深い乖離を感じさせられました。真の友情でさえも歴史という大儀に巻き込まれてしまう宿命は残酷さと無念さ以外の何ものでもありません。さて、作品としての評価は、残念ながら中盤以降は冗長的で間延びする場面が多く、時として話を端折って場面が展開する傾向があります。戦闘シーンが少々軽く薄っぺらく感じられました。しかしながら、チャン=ドンゴンと仲村トオルの熱演は心を揺さぶられますし、語られるテーマは必見です。特にナショナリズムを考えるうえで参考になる作品です。(お薦め度★★★)

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2005.04.11

『閉ざされた森』

監督、ジョン=マクティアナン。2003年米。原題『BASIC』。サスペンス・ミステリー映画。出演、ジョン=トラボルタ、コニー=ニールセン、サミュエル=L=ジャクソン。

密林で訓練中のレンジャー隊に不可解な殺人事件が発生、救助された2人の隊員の証言を基に真相を究明してゆく軍事ミステリーでした。ジョン=マクティアナンは『プレデター』(1987)『ダイ・ハード』(1988)『レッド・オクトーバーを追え!』(1990)の人気映画を監督した方です。映像や演出については文句無しです。しかし、話が二転三転、四転五転...とコロコロコロリン。最後には訳が判らなくなりました。(お薦め度★★)

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2005.04.10

『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』

監督、原恵一。2002年日本。アニメ映画。劇場版第10作。

第9作に引き続き良い作品でした。野原家がタイムスリップして戦国時代で活躍するSF仕立てのお話です。今回は悪役が登場せずに城に攻め込んでくる敵将がその役割を担っています。それほど悪党として描かれたわけでなくメリハリが弱くわかりにくいかもしれません。しかしながら、戦争の悲惨さや身分制度の不条理というテーマについてうまく描かれていました。なかなかクレヨンしんちゃんはあなどれません。(お薦め度★★★)

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2005.04.09

『チルソクの夏』

監督・脚本、佐々部清。2004年日本。青春映画。出演、水谷妃里、上野樹里、桂亜沙美、三村恭代、安大豪、山本譲二、イルカ。韓国語"チルソク"は七夕の意。

1970年代後半の77、78年を背景にした古き良き時代の清く正しい青春物語です。『半落ち』の監督なのですね。当時を上手に再現しています。同時期に高校時代を過ごした自分にとってかけがえの無い懐かしさがシンクロしました。韓国と日本の古くて新しい関係を考えるうえで大切な作品だと思います。出会いと初恋、別れを友情が包みます。女の子4人の好演が光りました。山本譲二は70年代が似合います。(お薦め度★★★)

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『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』

監督、原恵一。2001年日本。アニメ映画。劇場版第9作。

不覚にも大泣きしてしまいました。今までのクレヨンしんちゃんの中で絶品です。サスペンス・ミステリー調で何ともいえない緊張感が全編を通じて張り詰めています。昭和のノスタルジーをテーマに扱って大人の世代に間違いなく郷愁を呼び起こします。忘れかてけていた大切な時代の香りが蘇ってきました。前半のドタバタはいつも通りなのですが、後半は未来を取り戻すために怒涛の展開をします。ラストも格調高く悪役のキャラクターは愛すべきものがありました。(お薦め度★★★)

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2005.04.06

『フォーン・ブース』

監督、ジョエル=シューマカー。脚本、ラリー=コーエン。2003年米。原題『Phone Booth』。サスペンス・スリラー映画。出演、コリン=ファレル、ラダ=ミッチェル(妻)、フォレスト=ウィッテカー(刑事)、キーファー=サザーランド。

『フォーン・ブース』は固定電話(公衆電話ボックス)、『セルラー』は携帯電話を扱っており、共通の電話を道具立てとしたこれら2作品は対を成しています。『フォーン・ブース』で脚本を担当したラリー=コーエンは『セルラー』では原案者です。『セルラー』が作品として特に優れものだったので、期待を込めて鑑賞しました。非常に良く練りこまれた脚本は見事で、通話シーンでは子画面で相手を同一画面に映し出す臨場感のある演出が観ている者を飽きさせません。しかしながら、公共の場所で狙撃によって監禁するという設定は『スナイパー』と同様にサスペンスでありながら結末の選択肢は限られてしまいます。また、公衆電話ボックスで被害者となる主人公が一般人(善良ではないが)ということで物語に複合的な深みが出ません。計算され尽くされた完成度の高い映画だと思いますが、作品の世界に入ることができず置いていかれた気分です。『セルラー』並みの面白さとはなりませんでした。(お薦め度★★)

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2005.04.05

『渋谷怪談2』

監督、堀江慶。2004年日本。ホラー映画。出演、堀北真希、松山ケンイチ(『2』のみ)、木村茜(『2』のみ)、永澤俊矢、原史奈。

1』と『2』は同時上映されたようで、2つの作品は1回の制作で主役を違えて前篇と後編に分けたものです。主役は水川あさみから堀北真希にバトンタッチされました。当然ながら恐怖も引き継がれるのですが、『2』でのスケールアップしすぎた傍若無人さぶりは手に負えません。そのため全編に渡り辻褄が合わない散々なストーリーになってしまいました。もともと物語がロジカルに作りこまれていないため話が拡散してしまいました。このような展開はホラー映画だからこそ許されるのかもしれませんし、もともと制作者の意図なのかもしれませんが、あまりにアイデアが無さ過ぎではないでしょうか。『1』で指摘した刑事や医師の嘘っぽい演技と物語の中にあってこれだけ多くの犠牲の前に全く無能な彼らの位置付けが理解できません。特に『2』で準主役となる医師の行動は呆れてしまいました。助手役の原史奈は演技以前です。(お薦め度★)

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2005.04.04

『渋谷怪談』

監督、堀江慶。2004年日本。ホラー映画。出演、水川あさみ、柏原収史、森下千里、鈴木繭菓、弓削智久、和田聡宏、堀北真希。

公式サイトによると都市伝説をモチーフにしてこの作品がつくられたようです。渋谷という都市を舞台にスタイリッシュな映像が展開します。怪談というタイトルから連想させるものと違って若々しく新しい感覚のホラー映画です。『仄暗い水の底から』に出演していた主役の水川あさみは演技力がありこの作品に非常にマッチしています。共演した他の若手俳優も好演していました。しかし、脇役となる刑事や医師の演技はレベルが低く、恐怖の連鎖となるべき緊張感を打ち消しています。怖さもそこそこといったところで、表現方法が『リング』と『呪怨』の影響を受けている印象でした。(お薦め度★★)

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2005.04.03

F1第3戦バーレーンGP

バーレーン・インターナショナル・サーキット。昨年に続き中東での2回目の開催。
全長、5.417Km×57周=308.523km。

フェラーリチームは新型車『F2005』を投入し、ミハエル=シューマッハは公式予選1回目は3位、2回目は2位で合計2位となり、スターティンググリッドはフェルナンド=アロンソ(ルノー)に次いでフロントローに並んだ。チームメイトのバリチェロはマシントラブルで最後尾スタートとなる。2列目はヤルノ=トゥルーリ(トヨタ)、ニック=ハイドフェルト(ウィリアムズBMW)。佐藤琢磨(B・A・Rホンダ)は7列目13番手スタート。

決勝(4/3)
アロンソ(ルノー)がポールツーフィニッシュでマレーシアGPに続いて2連勝。2位ヤルノ=トゥルーリ(トヨタ)、3位キミ=ライコネン(マクラーレン・メルセデス)。
序盤早々にミハエル=シューマッハはマシントラブルでリタイア。中盤に入賞圏内を走行していた佐藤琢磨がマシントラブルでリタイア。終盤残り10周でジェンソン=バトンもマシントラブルでリタイア。ホンダはトヨタに比べだいぶ出遅れてしまった。ルーベンス=バリチェッロ(フェラーリ)は9位完走するものの失速した。新型車の完成度は低い模様。
5位となったペドロ=デ=ラ=ロサ(マクラーレン・メルセデス)が最高のパフォーマンスをみせた。佐藤琢磨の後を走っている間、琢磨を猛追してコースを外れるミスを犯すものの再び追い上げたり、終盤にはマーク=ウェーバー(ウィリアムズBMW)を追い抜くために数周に渡りハードなアタックを繰り返した。最後の最後までスリリングなバトルが見られ久しぶりに面白いレースとなった。

マレーシアGPに続き過酷な条件で気温も2度目の40℃を超え、コース上は50℃を超える暑さだった。前回よりも表彰台では元気そうに見えた選手だったがシャンパンを抜かずに早々と引き上げた。

なお、フェラーリは前日4/2に死去したローマ法王ヨハネ・パウロ2世(84)を追悼し、マシン先端に喪章を付けてレースに臨んだ。

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『救命病棟24時』(第3シリーズ11話+スペシャル1話)

出演、江口洋介、松嶋奈々子、香川照之、京野ことみ、小栗旬、大泉洋、川岡大次郎、MEGUMI、小市慢太郎、深浦加奈子、鷲尾真知子、渡辺典子、山口美也子、石黒賢、平田満、仲村トオル。

第3シリーズでは「大規模災害時の救急医療」テーマとされました。いつ何時発生するかもしれない首都圏の大地震を扱うというある意味でリスクの高い題材であったわけです。企画の思いっきりの良さと時代性に感心させられました。1995/1/17の神戸淡路大震災を徹底的に検証したと思える真摯な作りで、実際に被災したときのシミュレーションとして自らの身に置き換えて鑑賞しました。3/22の最終回は20.6%で平均19.1%、3/29のスペシャルとなる「アナザーストーリー」では18.8%の視聴率でした。1月期ドラマで第2位です。ちなみに1位は『ごくせん』(第2シリーズ)は最終回32.5%で平均27.8%でした。大ヒットとはならなかったのは、人間ドラマよりも被災時のドラマが前面に出たためだと思われます。質が高くても視聴率が取りにくかったのかもしれません。
第3シリーズということで主演の江口洋介の良さは言うまでもありません。出産復帰第一作として注目された松嶋奈々子も情の細やかさに対する演技力が増したようで、映画『リング』での母親役としての我が子に対する演技力の無さは解消された印象を受けました。
今回の出演者の中でも何といっても注目すべき人は大泉洋でしょう。地元の北海道で人気があり旬な俳優さんであることは知っていましたが、初めて画面で観ました。どうしても重たく暗くなりがちな場面が多くなりますが、重要なシーンでのムードメーカとしの役どころは見事で、軽すぎずコミカルすぎない程好い演技をこなしました。最終回後のスペシャルでは主役として大役をはたしました。今後の彼に注目していきたいと思います。(お薦め度★★★★)

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『クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶジャングル』

監督・脚本、原恵一。2000年日本。アニメ映画。劇場版第7作。

映画「アクション仮面」の先行試写が豪華客船で行われ、これに参加した野原一家を含む乗客が謎の軍団に誘拐されるという驚愕の事件ですが、相変わらず舞台設定が安っぽ過ぎます。辻褄の無さもここまでになると子供向けといえども呆れてしまいます。これではアイデアが生かされず折角の大事件すら意外性の無い出来事になってしまいほとんど大人が鑑賞できるレベルにはありません。また、悪党が落ちの無い冷徹なキャラクターでクレヨンしんちゃんのナンセンスギャグ世界と全く異質でした。小林幸子が歌うエンディング曲がいい味を出していました。(お薦め度★)

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2005.04.02

『クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦』

監督、原恵一。1999年日本。アニメ映画。劇場版第7作。

温泉の平和を守る「温泉Gメン」と、風呂嫌いな悪の秘密結社の戦いに巻き込まれた野原一家の運命はいかに!?丹波哲郎本人(声も)が登場するというナンセンスギャグ満載です。前半はセリフとギャグのテンポが良く大いに笑えます。しかし、巨大ロボットが登場してからは冗長すぎるシーンが多くなってしまいます。怪獣映画へのオマージュとして"ゴジラ"や"大魔神"を連想させる演出は制作者の思い入れが強すぎて自己満足の様相を呈してしまいました。(お薦め度★)

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『クレヨンしんちゃん電撃!ブタのヒヅメ大作戦』

監督・脚本、原恵一。1998年日本。アニメ映画。劇場版第6作。

オープニングに"エバンゲリオン"と"宮崎アニメ"のパロディで快調なスタートを切ります。空と海との大胆な場面展開はスパイアクションを彷彿とさせますが、そこはクレヨンしんちゃんアニメの限界で全く意外性を感じさせません。どうしても幼稚園児が主人公という制約が大き過ぎます。秘密結社「ブタのヒヅメ」が世界規模で混乱に陥れようとしますが、正義の組織「SML」が貧弱でグローバル感を打ち消してしまいました。(お薦め度★)

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2005.04.01

『悪について』

悪について(岩波新書 新赤版 935)
中島義道著

出版社 岩波書店
発売日 2005.02
価格  ¥ 735(¥ 700)
ISBN  4004309352

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題名もさることながら「はじめに」の以下に引用する冒頭文に興味が湧きました。

「いまやわが国では、親殺しや幼児虐待や少年による傷害・殺人など、残虐な犯罪事件が毎日のように起こっている。ジャーナリズムは騒ぎ立て、次々に教育評論家や精神病理学者や犯罪心理学者、はたまた歌手やタレントやスポーツ選手までが、テレビや新聞に登場して、わがもの顔に「対策」を論ずる。私には、このすべての現象がきわめて不愉快である。」

悪いことは単純に「悪」と認識してきた人間にとって、どうにも落ち着かない刺激的な文章でした。「悪」はすべての人間にあてはまることであると結論付けられています。その基盤となるカント倫理学を「悪」の側面から紐解いていきます。キリスト教における「原罪」の思想とは異なる世俗的な「根本悪」についてわかりやすく考察されています。しかしながら、一般向けとはいえ哲学書ですから内容を理解できたとはいいがたいのですが、本書を読み終えてみると引用した冒頭文がなんとなくわかった気がします。
犯罪事件の「悪」を騒ぎ立てて感情的になびきやすい日本人において、著者のように冷静に分析できる立場の方がいることに救われる思いがしました。

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