『世界最速のF1タイヤ』
F1カーは車体、エンジン、タイヤのどれもがレースに勝つために重要とされています。過去に何冊かF1関連書籍を読みましたが、エンジンや車体についての解説が中心でタイヤに関してはほとんど書かれていませんでした。著者の浜島裕英氏はブリヂストン・モータースポーツタイヤ開発室長で現在フェラーリなどのチームをサポートしています。まさにタイヤに関して真打登場といったところでしょう。著者がブリヂストンに入社した動機から1981年にモータースポーツ部門に異動してF2参戦し、宿敵ミシュランとの壮絶な戦いを通して勝つためのタイヤをつくる過程は直接現場にかかわった人間ならではの説得力ある描写です。F2、DTM、インディ、そして念願のF1へステップアップするドキュメンタリーは読む者の期待を裏切りません。F1におけるタイヤ特性や車体との関係についてもわかりやすく説明されており、タイヤからレースを考える視点に立った内容です。タイヤ以外にもミハエル=シューマッハはなぜ強いのかといった身近に接する立場で彼の魅力を存分に披露してくれます。最終章では昨年の第3戦バーレーンGPでの「サーキットの四日間」が克明にレポートされており、現場のエンジニアの緊張感が伝わってきました。TV観戦した2004年のレースを反芻しました。
ところで、本書については今年3月に発行されており気になっていたのですが、読むのを少しためらっていました。昨年の18戦15勝の覇者であったブリヂストンタイヤが、今年は低迷し続け第4戦サン・マリノGPでシューマッハの異次元の速さで2位となり見事復活と感じてやっと購入しました。ミシュランが活躍している中で読む気が起こらなかったのです。そして読み終えたとたんに第5戦スペインGPでのリヤとフロントタイヤの二重のトラブルで3位目前のシューマッハがリタイヤするというブリヂストンタイヤにとっては天国から地獄に突き落とされた事態になっています。完走したバリチェロのタイヤには異常がなかったようなので原因はタイヤ自体の問題なのかはわかりませんが、本当にレースは過酷です。
| 固定リンク
コメント