『マラソン』
監督、チョン=ユンチョル。2005年韓国。ヒューマンドラマ映画。出演、チョ=スンウ、キム=ミスク(母)、イ=ギヨン(コーチ)、ペク=ソンヒョン(弟)、アン=ネサン(父)。
今年1月に韓国で公開され500万人が号泣しハッピーになった感動作だそうです。最初にお詫びします。すいません。まったく泣けませんでした。また、観終わっての高揚感というか幸福感もそれほどではありませんでした。
自閉症の青年がマラソンに挑戦したという実話を基に作られた映画ですが、ともかく母親の救いがたい姿勢に唖然とさせられます。周囲の人間に対しての逆ギレが尋常ではないのです。文化の違いがあるのでなんともいえませんが、韓国社会でも困ったチャンの部類ではないでしょうか。当然ながら障害児を育てることは想像を絶する苦労が伴うことだと思います。強い意志で子育てしなければならないでしょう。猛母にならざるおえない。しかし、彼女の独りよがりで傲慢な態度は最後まで変わりません。だいたい息子をなんだと思っているのでしょうか。10kmマラソンで3位入賞しただけで数ヶ月でフルマラソンに参加させようという姿勢は常軌を逸してます。マラソンの理論を勉強しているわけでもなく、息子に伴走なり自転車で一緒に走るわけでもなく時計を持ってペースを気にするわけでなく、全くのど素人で精神論だけです。にもかかわらずコーチ(当初は不真面目なので責められてもしかたない)に対して最後まで失礼なことばかりで、スポーツを舐めているとしか思えません。たまたま主人公の青年がマラソン向きの体力があったのでやり遂げただけで、能力が無ければ大変な結末を迎えていたでしょう。母親とコーチの関係についての描き方、コーチの人柄や背景などほとんど説明不足で実話をベースにしたわりに脚本が薄く内容がありません。演出については、クライマックスのマラソンシーンが受け入れられないものでした。この表現は悲劇的な物語の際に一般的に用いられるものです。
唯一の救いは主演のチョ=スンウの自閉症の名演技でした。『ラブストーリー』で見せた実力はさらに磨きがかかっていて、韓国を代表する若手個性派俳優の1人として着実な成長をみせています。素朴な好青年というどこにでもいる"あんちゃん"のような親しみさを感じます。今後も彼の作品は期待したいと思います。[シネカノン]
(お薦め度★★)
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