『自己愛型社会 ナルシスの時代の終焉』
前著『人格障害の時代』が個々の人間をミクロ分析したもので、姉妹編としての本書は自己愛型へと進む日本社会がこれから先にどうすべきかをマクロ分析しています。古代ローマ、オランダ、アメリカ合州国を事例に上げ日本の将来のあるべき姿を洗い出します。少し意外だったのがオランダでした。欧州において何かモデルとなるような国だという意識がありませんでした。文化的に優れている印象が無く、これといったオランダ映画を観た記憶がありません。せいぜいサッカーにおいてオレンジ色のユニホームを来た力強いオランダ代表ぐらいしか知りません。この国は資源の無い小国ながら昔から自己愛型社会で営まれてきた歴史があり、17世紀に繁栄を示すものの近代において一旦凋落し、現代では成熟した自己愛型社会を形成して豊かな社会を作り上げているそうです。アメリカが自己愛を剥き出しにした弱肉強食の論理で活力源にしているのと違って、貪欲さをコントロールすることによって自己愛性を超えた共存型社会の可能性を示しており、日本が手本とすべき国であると著者は主張しています。アメリカを見習いたくないのは全く理解できるものの、オランダが日本の将来像の参考になるのかどうかについては本書だけでは何とも言えないというのが率直な感想でした。ただし、今後折りに触れオランダを意識します。
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