新書『ファスト風土化する日本』
三浦展(みうら=あつし)著。洋泉社新書。
何故、地方で理解しがたい凶悪な犯罪が多発するのか常々疑問に感じてきました。東京などの大都市で頻発する犯罪が地方に拡散している現実を理解できずにきました。本書を読んで納得です。
いまや東京などの大都市よりも、地方が危険なのだということです。
日本中に均質な中流社会・大衆消費社会が完成したと著者は指摘します。地方においても東京にある商品がロードサイドの大型ショッピングセンターで買える状況になり、便利を手に入れたかわりに地方都市の郊外化によって近所付き合いなどのコミュニティが破壊されてしまったため、犯罪が起こりやすくなってしまったと説いています。最近の主要な事件の共通項としてジャスコが近くにあることを述べています。映画『下妻物語』でジャスコをパロディとして扱っていることにも触れていました。東京よりも生活がよりバーチャル化され、消費社会の進行によって、従来の常識である東京が富んで地方が貧しいという立場が逆転したようです。
『下流社会』の前著にあたり、階層格差固定化の危険についても地方を題材に既に本著で語られていました。著者の洞察力の鋭さに敬服しました。最後の章で今後の日本のあり方について「関係」と「関与」を原理を提言されています。少子化による消費社会の衰退を前に是非とも考えなければならないキーワードだと思いました。
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コメント
ひとむかし前は、地方と都会の間には、全てにおいて時差があったのですが、
今はむしろ地方から都心へといった傾向も見られ、
この現象は今後も続くかもしれませんね。
地方が元気なのは、大歓迎。
でも人と人のつながりは、大切にしたいです。
投稿: ままぷりん | 2005.11.12 21:04
>ままぷりんさん、コメントありがとうございます。
確かにこの傾向は続くかもしれません。
仰るとおり、一方で地方が元気なのは良い兆しなのかもしれませんね。
人と人との関与が都市でも地方でも大事にしなければならないことだと思います。
投稿: erabu | 2005.11.13 01:44