来たぞ、大和。
[最初に]
戦艦大和に少しでも興味がある方は、大和の原寸大ロケセットは必ずこの機会に見ておくべきです。二度と1/1スケールで登場することは無いかもしれません。この大きさはイメージだけでは追いつけません。見ないと必ず後悔することでしょう。元々映画のセットなので、鋼鉄に色取られていますが実際はベニヤでできた巨大な張りぼてです。すでに雨風で痛んできており、ゴールデンウィーク後の5月7日の公開終了後に取り壊しが決定されたそうです。
[感想]
戦艦大和を体感しました。
ものすっごくでっかい艦でした。
映画のセットは実際の全長263mのうち、前から190メートルしかつくられていませんが非常に大きいです。乗った観光バスの車窓から見えた瞬間からワクワク感とソワソワ感が襲いました。バスを降りるや艦首前に組まれた20段余りの階段を小走りに掛け上がりました。目の前に出現した戦艦大和ロケセットは想像していた以上に圧巻でした。今まで抱いてきたイメージでの大きさは消し飛んでしまいました。想像力が乏しいというよりも、こんな大きさは想像できなかった。イメージの貧困というよりも実物大の実在感は脳で考えるものではなく、身体全身で感じるしかできないのです。デジカメ、ケータイで可能な限り全景を撮ろうとしましたが、一眼レフの超広角レンズがなければ収めることは不可能です。せめてビデオカメラで撮影すべきでした。
艦首での撮影が終了して階段を下りて、入場口へ行って乗艦です。セットですから10段くらいで簡単に登れます。そして現れたのが全幅最大40mのやはり想像できなかった広さの甲板が出現しました。艦首付近から艦橋方向をみるとに振り向くと、下った先の1番主砲まで体育館のような広さと表現するのがいいでしょうか、だだっ広い平面が広がります。
現代の私でさえ、こんなに大きな戦艦が沈むとは思えません。不沈艦と言われれば全く疑わずに信じてしまいそうな絶対的な大きさがありました。大和が破れるときは日本が敗れるときだと思った人が60年前の1945年(昭和20年)に多くいたのは間違いない事実でしょう。この巨大戦艦が戦闘開始わずか2時間で撃沈したということは、想像を絶する集中攻撃を受けたことは間違いありません。これが乗艦して真っ先に浮かんだ率直な感想でした。
しかし、ロケセットを後にしてすぐに全く逆の考えになりました。
原寸大ロケセットをJTBツアーで見学して、その良さが発揮されたのは大和ロケセットのある「日立造船向島西工場」の向島を、尾道港を挟んで対岸の尾道にある標高136.9mの千光寺公園から見下ろせたことです。丁度鉄骨剥き出しの艦尾から眺めることになったのですが、実物よりも70m短いにもかかわらず眼下に一際目立ちます。
ロケセットに乗艦したときに感じたこととは正反対の思いに囚われました。わずか2時間で撃沈したのは当然。こんなに大きければ格好の標的で、自分が敵機のパイロットならば目をつぶっても当てられると感じました。米空母艦載機延べ386機と交戦、多勢に無勢であればいくら強力な対空砲を備えていても時間の問題でしょう。沈没するのは当然の帰結だったのです。
時代に翻弄され、時代とともに敗れ去った戦艦大和の姿を心に刻みました。
[データ]
制作費 :制作費約6億円
工事着工日:2004年12月20日
工事完成日:2005年 3月25日
映画ロケセット一般公開:2005年 7月17日~2006年 5月 7日(当初予定の3月末から延長)
| 固定リンク
コメント
erabuさん、
大和をたどる旅、尾道の旅を楽しまれているのですね。
私の尾道の印象は、『時を止めた町』です。
エキゾチックさのない港町。
潮の香りが印象的でした。
ラーメンも美味しいですよね。
投稿: yuzuki | 2006.03.04 01:17
>yuzukiさん、コメントありがとうございます。
無事帰還しました。
尾道の大和をたどる旅、大いに楽しみました。
尾道は初めてで、私も『時を止めた町』と感じました。映画『男たちの大和/YAMATO』で盛り上がっているにもかかわらず、イマイチ活気が無い町でしたが、良い所ですね。
「尾道ラーメン」は朱華園でチャーシューメンと餃子を食べました。なかなか美味しかったです。
投稿: erabu | 2006.03.05 12:30
erabuさん、お帰りなさい。
TBありがとうございました。
記事を拝読しながら大和の姿を尾道の情景を思い出しています。
そしてerabuさんの言葉のひとつひとつに、
幼い頃に読んだ「大和」の本の、大和を造った人々の大和へ注いだ愛情を重ねています。
>自分が敵機のパイロットならば目をつぶっても当てられると感じました・・・・・・
千光寺から見下ろすとまさに敵機のパイロットと同じ視線でしょうね。
・・・・・・また、胸が詰まってきました。
幼い頃ね、東シナ海に「大和」を探しに行こうと真剣に考えていたのですよ。
投稿: yuzuki | 2006.03.05 20:53
>幼い頃ね、東シナ海に「大和」を探しに行こうと真剣に考えていたのですよ。
それほど熱い想いがあったのですね。
1999年に行なわれた大和の海底潜水調査について、大和ミュージアムの映像資料を確認しました。海底で眠る大和の模型もありました。
生存者の証言では、魚雷攻撃を受け続けた大和はいよいよ面舵や取り舵でかわきれなくなって、複数の米戦闘機が次々に繰り出した魚雷5発が次々に左舷に命中したそうです。
その後の沈没の様子がCGで描かれているのですが、左舷から傾いて艦橋が真っ逆様に海面を向いてから、大きな水中爆発の後に船体が割れて沈んでいったようです。
本当に無残としか言いようの無い、心が張り裂けそうな最期でした。
投稿: erabu | 2006.03.06 00:58
こんにちは erabuさん
トラックバックありがとうございます
大和の実物大の迫力はありますね
ただ、老朽化も目に付きますよね
尾道はどうでしたか?
地元の人間としては
いつもの風景なのであまり感想は
ないのですが、よそから来る人にはどう写るのかな?
投稿: なお | 2006.03.10 18:40
>なおさん、コメントありがとうございます。
実物大の大和は出来ることなら残して欲しいです。必ず再度見たくなると思います。
尾道は初めてでしたが、どことなく懐かしさを感じました。千光寺公園から見下ろす風景は程好い広さの空間が広がっていて、街全体に雰囲気の良さを感じました。いちかまた訪れたいと思います。
投稿: erabu | 2006.03.10 23:40
erabuさん、TBありがとうございました。
実物大の大和ロケセットに乗艦して、やはり大きさに驚きました。
それと、人が多いのにも驚きです(笑)
映画を観てから来た人、大和にあこがれていた人などなど、さまざまな思いで実物大の大和を見に来たんだろうなって思いました。
ロケセットを見るまでは「公開終了後は、呉の大和ミュージアムに移築してくれたらいいのに」なんて思っていましたが・・・
・・・無理そうですね(爆)
解体に1億円くらいかかると言われているらしいですし。
投稿: tama | 2006.03.14 09:35
>tamaさん、コメントありがとうございます。
本当に大きい艦でしたよね。行った日は、金曜日のお昼で寒い日だったにもかかわらず、結構混んでいました。公開終了に向けてさらに混雑するのでしょうね。100万人突破するかもしれません。
>解体に1億円くらいかかると言われているらしいですし。
大変な金額ですね。1/1というスケールはいろいろな点でインパクトがありますね。
投稿: erabu | 2006.03.15 06:26
erabuさん
こんにちは、TBありがとうございます^^
60余年前、大和を造った人たちはこの艦にどれほどの夢と希望を託したことだろうと、万感迫る思いでセットの上に立ちました。
軍艦というのはつまるところ「兵器」に他ならないのですが、幕末開国より100年にも満たぬ日本が、技術世界一を目指して民族の意地と誇りを結集させた、その象徴のように思えます。
予算も暇も少ないながら、見に行って本当に良かった。
映画『男たちの大和』も良い映画でしたが、このロケセットを残して一般公開してくれたことは、関係者さんたちの最大の功績かも知れませんね~!
投稿: ハシモト | 2006.03.15 16:48
>ハシモトさん、コメントありがとうございます。
本当に見学できて幸せでした。
>映画『男たちの大和』も良い映画でしたが、
>このロケセットを残して一般公開してくれた
>ことは、関係者さんたちの最大の功績かも
>知れませんね~!
仰る通りです。心から感謝したいです。
投稿: erabu | 2006.03.15 22:04