ドキュメンタリー番組「モーガン=スパーロックの『30デイズ』」、「#3イスラム修行を30日間」(お薦め度★★★★)
『スーパーサイズ・ミー』のモーガン=スパーロック監督のTV番組『30デイズ』全6話がWOWOWで放送されました。中でも3話目のキリスト教徒がイスラム教徒の許で修行を30日間積む番組が特筆すべきものでした。
2001年9月11日の米国が受けたテロ以来、アメリカ人にとってイスラム教は、「テロリスト」「怖い」「ビンラディン」を連想させます。一般のアメリカ人はイスラム教徒を毛嫌し、差別しています。その状況の中で1人のキリスト教徒がイスラム教の町に入り、苦悩の末にイスラム教を理解して自身の偏見を克服するという感動的なラストを迎えます。イスラムを学ぼうとした1人のキリスト教徒と、そのキリスト教徒を30日間預かったイスラム教徒の家族のそれぞれの勇気に頭が下がりました。理解し合おうとする心がいかに素晴らしいが胸に迫ってきます。
いままでに真摯にイスラム教を扱った番組が無かったので非常に勉強になりました。以下に番組で知った情報を書き残します。
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イスラム教は世界第2位の大宗教で信徒は15億人。米国に600万人いる。番組の舞台は、ミシガン州ディアボーン、ポーランドとドイツ系の街がイスラム化し、米国最大のイスラム教の町。人口3分の1がイスラム系で市内にモスクが30以上ある。
今回参加したのは米国東部ウェストバージニア州チャールストンに住む、キリスト教徒のデイヴ氏、33歳。保険マン。妻と幼児の3人暮らし。
番組『30デイズ』のルールは3つ。
1)イスラム信徒の家に30日間暮らし、着る物も食べ物もすべて慣習に従うこと。
2)毎日コーランを読むこと。
3)男だからヒゲを生やすこと。
現地入りするため、デイヴ氏はいつも利用している空港をイスラム教徒の服装で行ったところ、空港内での人々から注目される。いままで荷物を調べられたことがなかったのに、手荷物検査、履いている靴を脱がされスキャナーチェック、ボディチェックが行なわれる。
ホスト・ファミリーはパキスタン系アメリカ人のシャマエル=ハーク氏、職業医者。妻は法学生。「9.11から責めるような目で見られる」とコメント。家の中は靴を脱ぐことを要求されて戸惑うデイヴ氏。ハーク氏の妻が使っているへジャブというスカーフは、元はユダヤ教からで聖母マリアもベールをかぶっているとの説明に驚くデイヴ氏。
イスラム教はユダヤ教やキリスト教から派生している。この3つの宗教は唯一神を信じている。
コーランはイスラムの聖典で、ユダヤ教やキリスト教の聖書にあたる。預言者ムハンマドが聞いた神の言葉。
信仰の柱とされる教義は5つ。
・信仰告白
・喜捨
・断食
・メッカ巡礼
・1日5回の礼拝
朝5時半に大音量で起こされ、面食らうデイヴ氏。ただし、礼拝に参加しない。デイヴ氏いわく「無責任な真似はモラルに反する。ずっと信じてきた神に背を向けたくない。」
ハーク氏が通勤する前に、デイヴ氏に「他人の男女が2人きりになることは許されない」と不在時には家から出るように指示が出る。
3つの宗教の違いは次の通り。
・ユダヤ教の救世主はまだこの世に現れていない。
・イエスを救世主とみなしたユダヤ人はキリスト教をつくった。
・イスラム教のイエスは預言者の1人でしかない。神の言葉を託されたのはムハマンド。
デイヴ氏は導師・A=フセイニ氏に教えを乞う。「イエスは十字架の上で死んだ。肉体を持つ人間だから。この世を神が動かしている。神は死なない。」「靴を脱ぐ行為は、神の家に入るときは最高の礼儀を払わなければならないから。」
モスクでの礼拝で、アラビア語が分からなければ祈れないと考え、自ら追い込まれるデイブ氏。
新しいモスクで、新しい導師・E=アラワン氏からコーランのアラビア語と英語の対訳をもらう。
「アラーのほかに神は無し」
「ムハマンドは神の使徒なり」
「来たれ礼拝に成功のため」
「アラーのほかに神は無し」(以下繰り返し)
礼拝時の言葉が少ないことに意外と感じるデイヴ氏。
食べ物に関する戒律はユダヤ教に似ていて、豚肉と酒類はダメ。神の祝福を受けた肉のみ。子羊と牛肉。
デイヴ氏が米イスラム連絡会議の仕事として、イスラム教徒への差別を無くすため一般市民の署名集めを行なう。しかし、全く無視される。
28日目、金曜の集団礼拝でデイヴ氏は新しいモスクで一緒に祈った。
今回の体験を通じてデイヴ氏が次のように語る。
「イスラム教徒はみんな自分に厳しくちゃんとしている。宗教上の偏見もなくなった。」「ほんの数人がやったことで15億人の信徒をテロリストと決め付けるのは馬鹿げている。」
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