新書『論争する宇宙』
著者、吉井譲(よしい=ゆずる)。東京大学大学院理学系研究科教授。天文学教育研究センター長。
2006/1/22発行。集英社新書。
サブタイトルをつけるとすると『望遠鏡建設奮闘記』になるでしょう。天文学者で理論家の著者が、マウイ島に日本で2番目に大きい口径2mの主鏡の「マグナム(MAGNUM)望遠鏡」を苦難の上に建設したプロジェクトを紹介しています。ハワイ島にある口径8.2mの主鏡をもつ日本最大の「すばる望遠鏡」が日本の国家プロジェクトとして1999年に完成し、1年遅れて著者が所属する東京大学の望遠鏡が完成しています。「すばる」は性能が高いが、多くの研究者がを使用するため、申請手続きがあって利用時間がわずかという制約に対して、口径でわかる通り性能は落ちるものの著者の研究専用に継続的に集中して使えることによって、大きな発見の可能性があるそうです。
現代宇宙論が理論と観測でどのように進化してきたかをわかりやすく解説してくれており、アインシュタインが「生涯最大の失敗」と自ら否定した"宇宙定数"を著者が復活させ、それを証明するために望遠鏡を持つに至ったきっかけが語られています。最先端の宇宙論を展開しながらの望遠鏡建設という泥臭い物語は胸を打ちます。
タイトルが良いですね。刺激的で知的好奇心をくすぐられます。宇宙に興味のある方は是非読まれることをお薦めします。
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