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2006.09.05

新書『少年事件に取り組む』

著者、藤原正範(ふじわら=まさのり)。鈴鹿医療科学大学助教授。
2006/2/21発行。岩波新書。

非常に考えさせられました。
著者は2005年3月まで28年間、家庭裁判所調査官を務め4000件もの少年や家事のケースに取り組んでこられ、その中から実際にあったケースを基にその時に判断した経過やその後にどのような結末となったかを示され、現在の課題や将来に向けての提言を著されています。
少年犯罪の凶悪性だけがセンセーショナルにヒステリックに報道され、本来様々な視点から冷静に議論しなければならないにもかかわらず、社会全体の人への不信から少年法の精神が後退しています。厳罰化だけが煽られ、保護よりも処罰せよとの論調がマスコミによって繰り返されています。このような状況に対し、本書では次のように記述されています。

「少年法は誰のためのものか。加害者側に偏り過ぎて犯罪被害者を忘れているという立場から、この質問を投げかけられることが多い。これは少年法を刑事政策という一面のみでとらえた問いであるように思う。少年法の刑事政策としての側面は否定しようもないが、そうでありながら、同時に目標を「健全育成」とし、教育、社会福祉、医学などの力を借りて、子どもを育て直し、より良き潜在力をまっとうさせることをその中身としているのである。」

少年法の精神を守りながら、非行少年を社会に戻す役割を担う現場の方々の努力は相当なものがあり、その苦悩が真摯に伝わってきました。取り上げられたケースは事実に基づく重みから納得性の非常に高い内容です。著者のあらためて健全な議論を期待したいという主張は理解できました。

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