映画『武士の一分(いちぶん)』(お薦め度★★)
監督、山田洋次。原作、藤沢周平「盲目剣谺返し(こだまがえし)」(『隠し剣秋風抄』所収)。2006年日本。時代劇。出演、木村拓哉(三村新之丞)、壇れい(三村加世)、笹野高史(徳平)、小林稔侍(樋口作之助)、緒方拳(木部孫八郎)、桃井かおり(波多野以寧)、坂東三津五郎(島田藤弥)。
こんな小品が大ヒットした映画なのでしょうか。シンプル過ぎて全く捻りがありません。
藤沢周平原作・山田時代劇三部作『たそがれ清兵衛』『隠し剣 鬼の爪』の最後を飾るにはあまりに軽い印象です。評価できなかった『隠し剣 鬼の爪』よりも伝わるものがありませんでした。山田洋次監督と木村拓哉とのコラボレーションが興行的に成功したのでしょうが、脚本は特別なものではなく、映像が語る作品でもなく、時代劇で楽しみな殺陣も特別なものがなく、すべてが小粒です。
キャスティングはどうでしょうか。三村の叔母役の桃井かおりが良い味を出していたくらいで、演技力で凄みを感じさる登場人物は皆無でした。木村拓哉は人気者とはいえ、映画スターに必須の華を感じられません。それは今年公開の『HERO』でも証明されています。彼がTVタレントらしいと思えたのは、目が見えなくなった表情のアップにおいて、ディズニー映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのキャプテン・ジャック=スパロウのパロディをフジテレビのバラエティ番組「SMAP×SMAP」で演じていた顔とそっくりで、思わず笑えてしまったことです。
この作品で一躍有名になってサントリー発泡酒CM「金麦」に抜擢されるヒロインの壇れいは絶賛されるほどの演技ではありません。可も無く不可も無い無難といったところです。この作品で一番重要な不貞に苦悩するシーンは平板でした。
松竹としては桁違いのヒットを記録したようです。興行収入40億円であの感動作『ALWAYS 三丁目の夕日』の35億円を超えていたとは不思議でしかたありません。何故大ヒットしたのか理解できません。全てにおいて期待外れでした。
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