映画『犬神家の一族(2006)』(お薦め度★)
監督、市川崑。脚本、市川崑、日高真也、長田紀生。原作、横溝正史。2006年日本。ミステリー映画。出演、石坂浩二(金田一耕助)、富司純子(犬神松子)、松嶋菜々子(野々宮珠世)、尾上菊之助(犬神佐清)、松坂慶子(犬神竹子)、萬田久子(犬神梅子)、葛山信吾(犬神佐武)、池内万作(犬神佐智)、螢雪次朗(犬神幸吉)、永澤俊矢(猿蔵)、石倉三郎(藤崎鑑識課員)、尾藤イサオ(仙波刑事)、嶋田豪(若林久男)、三條美紀(お園)、松本美奈子(青沼菊乃)、林家木久蔵(柏屋の九平)、三谷幸喜(那須ホテルの主人)、深田恭子(はる)、奥菜恵(犬神小夜子)、岸部一徳(犬神寅之助)、大滝秀治(大山神官)、草笛光子(琴の師匠)、中村玉緒(柏屋の女房)、加藤武(等々力署長)、中村敦夫(古館弁護士)、仲代達矢(犬神佐兵衛)。角川映画の第1回作品として1976年に製作された『犬神家の一族』を30周年を記念して再び市川崑監督が自らリメイク。
セルフリメイクは失敗です。
オリジナルと比べて優れたところはありません。脚本、演出、編集のいずれも落ちます。特にキャスティングは問題でした。この映画の重要な登場人物は犬神松子と野々宮珠世の2人です。この2人を演じる役者によって作品の良し悪しが決まります。
オリジナル(1976)とセルフリメイク(2006)の女優を比べてみましょう。
犬神松子:高峰三枝子(オリジナル)×富司純子(リメイク)
野々宮珠世:島田陽子(オリジナル)×松嶋菜々子(リメイク)
犬神松子においては、旧家の長女役なので貫禄が必須です。富士純子と比べて高峰三枝子のほうが数段格が上で、その存在感と演技力には太刀打ちできません。明らかに役者の格が違います。原作は推理小説として作品性が高いわけではないので、横溝正史の描くおぞましい血縁関係やその醜い遺産相続などのおどろおどろしい世界を伝えきれないと面白いものにはなりません。必要以上に気合いを入れていたのは伝わってきましたが、富司純子では役不足でした。
一方の野々宮珠世ですが、美人度と華やかさにおいては、松島菜々子が上です。しかし、島田陽子と比べて致命的に演技力が劣っていました。犬神佐清を慕っていることを明確に表現しなければエンディングが迎えられないですが、松島菜々子では悲劇の中の唯一の救いを観客に伝えることができていません。
期待はしていなかったものの、これほど作品に差が出るとは以外でした。
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コメント
今晩は♪
トラックバックありがとうございました
前作よりも細かい部分でつじつまが合うようにうまくまとめていましたが、私もどちらかといえばリメイク前のほうが好きですね
それにしても佐智の殺し方には疑問です
原作では旧屋敷に再度ぐるぐる巻きにされてなくなってるはずが、どうしても屋根裏にしたいようですね。ここの意図は一体なんだったのでしょう
せっかく琴の師匠のエピソードをいれるのだから、中座して云々もあるのに勿体ないと思います
投稿: maki | 2010.09.09 18:38
>makiさん、こんばんわ♪
>私もどちらかといえばリメイク前のほうが好きですね
本作は作られなくても良かったのではないかと思うほどでした。
角川映画第一弾として記念作品としてのリメイクでしかなく、作品性を比べるだけのものはなかったように感じます。
>それにしても佐智の殺し方には疑問です
不思議ですよね。
リメイクでも扱いを変えなかったのは、監督には強いこだわりがあったのかもしれません。今となってはわかりませんね。
投稿: erabu | 2010.09.09 22:25