映画『過去のない男』(お薦め度★★★)
監督・脚本、アキ=カウリスマキ。2002年フィンランド・ドイツ・フランス。人間ドラマ映画。出演、マルック=ペルトラ(過去のない男)、カティ=オウティネン(イルマ)、アンニッキ=タハティ(救世軍のマネージャーにしてバンドのヴォーカリスト)、マルコ=ハーヴィスト&ポウタハウカ(救世軍バンド)。2002年カンヌ国際映画祭グランプリ、主演女優賞受賞。
味のある面白さです。
冒頭いきなり衝撃的なバイオレンスで始まり、ホラーっぽいシーンが登場して思わずどうなるのだろうかと観客を不安にさせるスタートを切ります。意外性があるというか風変わりな作風です。このトリッキーな手法が延々と続くのかと思いきや、その後は落ち着いた語り口で話が進みます。
暴力によって記憶喪失になった"ある男"の再生と希望に満ちるだろう未来が描かれています。一文無しで身元がわからないという逆境を悲観することなく、淡々と前向きに生きようとする主人公を、それぞれの立場で助けようとする人たちと、金をむしろうとする輩とのコントラストが不思議と温かな視線にさせてくれます。
記憶喪失のストーリーというととかく過去を引き摺って、サスペンス調に謎解きが行われて過去と未来を対比させるという構成になるのが常道ですが、本作の主人公は過去もこだわらないし否定もしない、それはそれとしてあるがままの未来を進んでいくという生命力というか「男力(おとこりょく)」の押しの強さ、斬新さに羨望させられます。歳をとってもカッコイイ恋愛があるんだよと思わせるところが憎いですね。
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