第21回フジテレビヤングシナリオ大賞「輪廻の雨」(お薦め度★★)
脚本、桑村さや香(第21回フジテレビヤングシナリオ大賞受賞作)。プロデュース、中野利幸。演出、並木道子。制作、フジテレビドラマ制作センター。出演、山本裕典(三上孝平・大学生)、瀬戸康史(三上修平・中度知的障害者)、貫地谷しほり(菅井愛実・孝平と同じ大学に通う女子大生)、青木崇高(青木浩之・刑事)、手塚理美(橘君枝・工場長の妻)、永井大(徳永剛・刑事)。
番組紹介(フジテレビHPから引用)
1987年に創設されて以来、坂元裕二、野島伸司、水橋文美江、橋部敦子、浅野妙子といった多くのスター脚本家を輩出してきた脚本家への登竜門ともいえる『フジテレビヤングシナリオ大賞』。
今年の大賞受賞作は桑村さや香さん作『輪廻の雨』。「世の中の不条理に苦悩する主人公の心の葛藤が繊細に描かれている」と審査員からの高い評価を受け、応募総数1450篇の中から大賞に選ばれた作品です。
タイトルに惹かれて観ましたが、未熟な作品でした。
ドラマ化するレベルの脚本ではありません。そもそもこのように3歳年が離れた普通の大学生と社会人で知的障害者の兄弟が存在するのでしょうか。ドラマを観る限り、母は死別し父親は家出して兄弟だけで生計を立てていたようですが、兄の方は普通にアルバイト学生になっています。話の流れから父親の家出は大分前のようですから大学進学を諦めるのが設定としては自然だと思います。
本来ならば番組の成り立ちとして演出が脚本を大いにカバーすべきなのでしょうが、全く中途半端でした。ドラマの中核となる主人公の大学生と彼女との関係がしっかり描かれていません。一応恋人同士らしいのですが、深かったり浅かったりで訳がわかりません。また、彼女の人物像を描いていないため、彼女のセリフが唐突なところがありました。そのため、主人公との重要なシーンで明らかに不自然な会話のオンパレードとなりました。これではさすがの演技派女優・貫地谷しほりでも実力を発揮できません。主人公の山本裕典に至っては役を理解できていないのか悲壮感だけのワンパターンな逆切れ演技で終ってしまいました。弟役の瀬戸康史は何とか無難にこなしていたと思います。
それにしてもラストにおける弟の不条理な行動は“輪廻”というタイトルとも合致していませし、知的障害者に対して偏見を抱かせる可能性があり評価できません。フジのドラマなのに、いまだにこのような物議を醸すシーンを盛り込むとは意外でした。
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