« ハイブリッド車の落とし穴! | トップページ | 映画『劇場版BLEACH Fade to Black 君の名を呼ぶ』(お薦め度★★★) »

2010.01.08

単行本『Googleの全貌 そのサービス戦略と技術』

編者、日経コンピュータ。
2009/12/14発行。日経BP社。

グーグルの今を理解するうえで的確な本です。
何を考え、どこを目指そうとしているのかがわかります。それにしても驚いた表現を本書で使っています。グーグル社員を「グーグラー」と表記していました。社員自身がそう言っているのかはわかりませんが、執筆陣である日経コンピューターの記者達は堂々と使用しています。過去に先進的な企業人をこのように表記した例はないはずです。アップルでもマイクロソフトでも使われたことはないでしょう。そもそも○○ラーという表現は、何かに心酔している人たちが自身を表現するときに使います。例えば人気女性歌手・安室奈美恵の熱烈なファンがアムラー、マヨネーズ好きの人がマヨラーと自分を表します。「グーグラー」の使い方は適切とは思えませんが、ことグーグルにおいては、1998年に創業し10年足らずで年商2兆円を超える企業に成長しました。サーバー数は300万台を突破したともいわれます。この驚異的なインフラを持った自前主義の2万人のエンジニア集団を表現するのに相応しいのかもしれません。それほど革命的な会社なのです。
本書の目玉は30人近いグーグラーにインタビューをしています。彼ら自身の言葉で様々なことが語られていますが、中でも「世界を変える(Change the World)」と口にするグーグル社員は少なくないそうです。崇高な目標を掲げるエキスパートな人々が切磋琢磨している様子が伺えました。

競合については、Chrome OSで全面激突が注目されるのでマイクロソフトが最大の敵と思っていましたが、本書ではグーグルからみた最大の敵は、世界最大のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)Facebookを運営する米フェースブックだそうです。さらに、本書を読み終えたときに、米グーグルは1月5日、最新バージョンのAndroid 2.1搭載のスマートフォン「Nexus One」を発売しました。これにより米アップル製携帯電話機「iPhone(アイフォーン)」とも激突は必至となりました。アップルとの競合については書かれていませんが、グーグルの行動原理が読み解ける本書からは意外なことでないことが理解できます。

ところで、本書を購入するきっかけとなったのは年末に送信された「Subject: ITproメール 2009.12.21[グーグルの技術者は一体何を考えているのか?]」でした。本書の紹介文を引用します。

□□‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
□◆ グーグルの技術者は一体何を考えているのか?
□□‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 米グーグルは不思議な会社である。テレビカメラを積んだ車を街中走らせて街並み
を勝手に撮影したり、世界中の書籍をスキャンしてみたり。かとおもえば、電力会社
と手を組んだり、電話ビジネスに興味を示したり。いずれもIT(情報技術)の範疇に
入る、と言えばそれまでだが、よく考えると、それぞれのサービスの意味や関連が分
からない。いや、よく考えなくても、各サービスにそもそも関連などないのであろう

 不思議な会社であるため、グーグルについて本を書きたくなる人は多いようで、和
書だけ見ても結構な数のグーグル本が出版されている。グーグルの各種サービスの使
い方を説明した一般利用者向けの本、グーグルの野望をジャーナリスティックに描い
たビジネス書、グーグルが社会にもたらした影響を分析した社会科学(のような)本
グーグルの検索サービスを支える技術を解説した技術書、などなど。

 そうした中、これまで無かったのは、多様なサービスを開発しているグーグルの技
術者達が何を考えているか、どのような思いで仕事に取り組んでいるかをインタビュ
ーしてまとめた本である。外からグーグルを眺めて論評することにもちろん意義はあ
るが、当事者に「あなたは何を考えているのですか」と聞いてみることも重要だ。し
かし、グーグルは取材に対し、積極的に応じる会社ではなかった。このため、技術者
の肉声は少なくとも和書を通じては明らかにされてこなかった。

 まだ世の中にないコンテンツを作ってみよう。こんな意気込みで、日経コンピュー
タ編集部は、グーグルにインタビューを申し込んでみた。幸いにして、30人近いグー
グル技術者にインタビューでき、その結果を基に、日経コンピュータの特集記事をま
とめ、さらに一冊の書籍を作ることができた。

 それが『Googleの全貌 そのサービス戦略と技術』である。
  http://www.amazon.co.jp/dp/4822262421/

 ところでグーグルはなぜ、30人もの技術者のインタビューを設定してくれたのか。
どうも、グーグルがあることに悩んでおり、その対策を考えていたところに、ちょう
ど我々の依頼が入って来たので、応じてくれたらしい。

 その悩みとは、「本来、エンジニアの会社であるグーグルの姿が誤って伝えられて
いる」というものだった。外からうかがい知れない野望を抱き、情報による世界征服
を目論んでいる、といった見方をどうもされている。それは心外だ、なんとかしよう
ということらしかった。

 改めて考えてみると、ITの世界において、マーケティングも販売も経営戦略も知的
財産管理も重要だが、なんといっても一番重要なのは、ITを創りだしている技術者達
である。グーグル以外にも、重要なITの会社は沢山ある。その現場を支える技術者の
肉声を今後も世の中に発信するお手伝いをしていきたい。
                      (谷島 宣之=日経コンピュータ)

□□‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
□◆ 【日経BP社から】新刊書籍のご案内
□□‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

話題となった日経コンピュータのGoogle総力特集号(2009年9月2日号)を書籍化!

G┃o┃o┃g┃l┃e┃の┃全┃貌┃ そのサービス戦略と技術
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛ 
Chromeブラウザ、Chrome OS、Wave、クラウド、Androidなど、「検索エンジン」の
サービスに始まったGoogleは、新しい領域へサービス、インフラの範囲を着実に広
げている。Googleはどこを目指しているのか。これまでの技術の足跡と開発陣営の
強さを追いながら、この先の展開を探る。

日経コンピュータ 編、2009年12月14日発行、A5判、242ページ、2,100円(税込み)

|

« ハイブリッド車の落とし穴! | トップページ | 映画『劇場版BLEACH Fade to Black 君の名を呼ぶ』(お薦め度★★★) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 単行本『Googleの全貌 そのサービス戦略と技術』:

« ハイブリッド車の落とし穴! | トップページ | 映画『劇場版BLEACH Fade to Black 君の名を呼ぶ』(お薦め度★★★) »