新書『映画にしくまれたカミの見えざる手 ニッポンの未来ぢから』
著者、谷國大輔(たにくに=だいすけ)。
2009/6/20発行。講談社+α新書。
映画に関する国家戦略から身近な映画に関する様々な雑学がひとつの読み物としてまとまっています。製作者側の視点も入っており、映画ファンには楽しめる内容でした。
いろいろな知識を獲得できます。以前から気になっていたハリウッドが何故リメイク権を取得するのかがわかりました。米国人は字幕で映画を観る文化がなく、外国映画を字幕付きで上映する映画館が無いので外国映画のリメイクが生まれたようです。また、ブロックバスター方式と呼ばれる一本の映画から可能な限り利益をあげることを意図して製作されるため、複雑な権利関係を何から何まで総ざらいに買い取ってリメイクする必要があるそうです。
ロケについても、詳しく解説されています。特に日本ロケが難しいことが理解できました。1989年公開の『ブラック・レイン』で日本でのロケが極めて難しいことが世界の映画人に知れ渡ったそうです。東京での予定を大阪に変更したものの不調に終って、結局米国に戻って大規模セットで撮影したそうです。東京などの大都市でのロケは、「縦割り行政と硬直した規制にがんじがらめにされて身動きがとれない状況」で、15年後の『ロスト・イン・トランスレーション』でようやく日本ロケ撮影が可能であることが認識されるようになってきたそうです。
知っているようで知らない事柄を平易に説明しています。映画に関する話題は限りなく裾野が広いので、どの切り口で本をまとめるかがなかなか難しいものの、身近な疑問からスタートして今後の映画界の明るい未来を感じさせる内容は好感が持てました。
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