当時の菅直人首相ら一握りの政権幹部に首相執務室で示された後、封印された「最悪シナリオ」の危機的状況はいまだに収束していない模様です。「最悪シナリオ」は、内閣府の原子力委員会の近藤駿介委員長が作成した昨年3月25日付の「福島第1原子力発電所の不測事態シナリオの素描」です。放射性物質の断続的な大量放出が約1年続き首都圏を含む半径300キロに及ぶとする内容でした。
小出裕章:4号機燃料プールが崩壊すれば日本は"おしまい"です
VIDEO この番組をJ-CASTニュースが記事にしたものを引用します。
消えていない福島原発「最悪シナリオ」4号機水抜けで東京アウト 2012/3/ 8 10:05
福島第一原発事故で懸念された最悪シナリオのひとつに、4号機の燃料プール問題があった。野ざらし状態で冷却できなくなった燃料プールの使用済み核燃料が溶け、膨大な放射性物質が出てくるといったものだった。 原発再稼働論がかしましいなか、危機感を露わにするテレビ朝日社員コメンテイター兼リポーターの玉川徹は、小出裕章・京都大学原子炉実験所助教にインタビューし、原発の危険性を視聴者にリマインドしてくれた。
野ざらしの燃料プールにヒビ入っただけで… 事故当初にくらべれば、一定の電気や水(循環)ができている――とはいえ、小出氏によれば、4号機プールの根本的な状況に変わりはない。地震などで建物やプールが壊れ、水が抜けて燃料が冷やせなくなれば、今よりも破局的な事態になるのだ。 そうならないためには、一刻も早く燃料をプールから取り出すべきだが、本来の移動装置は壊れ、プール内にはおそらくがれきが散乱している。作業は水中で巨大な容器に入れ移すといったおおがかりなもので、年単位の時間が必要になる。 東京電力の工程表では、取り出し作業に入れるのは来年12月(2013年)以降だという。「それまでにプールにヒビでも入って水が抜けちゃったら、東京まで含めてアウトです」(玉川)
ドイツZDFでも同様な報道がされていました。
4号機燃料プールが崩壊すれば日本の終わりを意味する (ZDF)
VIDEO 「最悪シナリオ」に関する動画は次のURLをご覧下さい。
20110911菅前首相の最悪のシナリオは半径300KM圏内避難① http://dai.ly/omAlO8
20110911菅前首相の最悪のシナリオは半径300KM圏内避難② http://dai.ly/pZQfxv
ちなみに武田邦彦教授は次の記事をブログで平成24年1月21日に発表されていました。一部引用します。
4号機とセシウムの基礎知識(5) 危険性
ところで、4号機ですが、4号機のプールには使用中と使用後の核燃料1500本があります。これが地震などで倒壊して原子炉建屋の中に落ちた場合、1)部分的に小さな核爆発がおこる、2)下に落ちてから放射線の灰が飛び散る、の2つが考えられます。
核爆発の方は起こっても極めて小さく、わずかな中性子がでるだけと考えられます。核爆発が起こると燃料と燃料の間にある水が沸騰して燃料間の距離が離れますので、瞬時に核爆発は収まります。
第二次世界大戦中、ハンフォードなどのアメリカの施設で爆発事故がありましたが、このような爆発では数10人が死ぬことがあっても、原発の外まで影響が及ぶような規模はありませんでした。
つまり、広島の原爆のようなものは、1)金属の固まり、2)ウランの濃縮度が90%ぐらい、と爆弾向きなのであれほどの爆発をしますが、4%程度の濃縮度のウランが燃料棒の中に入っていて、お互いに強くバインドされていない時には、大規模な核爆発は生じないと考えられます。
【追記:2012/3/12】 3月10日にも発言されていました。全文引用します。
福島4号機の問題・・・合意できる科学的発信を
このブログでは福島原発の爆発直後から、「再爆発はほとんどない。もし危険が生じても逃げる時間がある」ということを繰り返し書いてきました。しかし、2011年の4月から専門家あるいはブログで「福島原発の再爆発」が取り上げられています.
なぜ、私が「再爆発の危険性が低く、もし危険が生じても逃げる時間があるか」と判断しているかということを繰り返して書きました。また、私はすでに大半の放射性物質が福島を中心として降り注いだのに、まだ福島原発のことを言うのは、多くの人の被曝から目をそらす負の効果を持つだけと思っています.
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【理由】 第一に、原子炉は核反応が止まると急激に力を失い、1日で10分の1という具合に小さくなり、途中で小さくなりかたは弱まりますが、1年経つと運転中の400分の1以下になっていることです。
第二に、原子炉建屋の中に放射性物質が大量に放出されても、その運搬手段がなければ遠くには飛びません。それは「核爆発、水素爆発、水蒸気爆発」などの爆発力が必要です.現在の福島原発は4号機も含めて爆発の可能性がきわめて低くなっています.火災ぐらいの力では付近は影響を受けますが、10キロ以上のところに直ちに降り注ぐことはありません.
第三に、4号機には燃料となるウランがありますが、ウラン235が4%程度の原子炉用燃料は水が減速材として存在し、特別な立体配置にならないと核爆発を継続することはできません。従って「未使用の核燃料」があっても危険ではありません.
第四に、4号機のプールが大きく崩壊し、核燃料と水が原子炉の下に落下した場合、原子炉の下に水を注ぐことができますので、最低限の冷却ができます。また一部に穴があいて、水漏れが始まって徐々に乾燥した場合、燃料が加熱して融けたり破壊するまでにかなりの時間がかかると想われます.それは、2011年3月と比べると「発熱量」(放射性物質の崩壊速度)が400分の1以下になっています(少なくとも50分の1以下)。だから3月には燃料がとけるのに1日かかったとすると、今は50日とか400日かかるということを意味しています.しかも、3月に燃料棒が融けたのは原子炉内で直接水をかけられなかったのですが、現在は4号機のプールに水をかけることができます。
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福島原発が再爆発する、危険が迫っているということが言われる度に・・・すでに事故から20回ぐらいは言われていると思いますが・・・その度に、危険を警告している人の発言内容や技術内容を見ていますが、私が技術者としてなっとくできる説明はありません.
「4号機があぶない」・・・「日本はダメだ」というように説明なしにのものがほとんどでした。私たち技術者は「専門家同士は冷静に考えれば判る」ということを「科学」とか「学問」というのであり、またそれは「思想」などとは無関係です.
私と全く違う思想の人がご発言になっても、その内容が学問として納得できるものなら、同意します.それは科学者や技術者の基礎的な素養だからです.
福島原発より、セシウム再飛散の方がずっと危険ですし、原発再開の方が何10倍も危険です.また、人間のやっているものはいつも危険だという意識も必要で、「ゼロ(安全)か100(危険)か」ということもありません.
「takeda_20120310no.459-(8:01).mp3」をダウンロード
(平成24年3月10日)
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