将棋棋士・村山聖の生涯を描いた『聖の青春』を読んで号泣した
著者:大崎善生
発行:講談社文庫
発行日:2002年5月15日
泣けて泣けて、涙が止まりませんでした。
本を読んでこれほど泣いたのは初めてです。
類まれな強い棋士の非常に悲しい物語でありながら、とても人が愛おしくなるノンフィクション作品です。
先日『覆す力』のレビューをアップしたところ、友人から将棋関連のお薦めとして本書を教えてもらいました。友人が紹介してくれる本はとても面白いので、すぐにamazonから注文しました。
『覆す力』の中で著者・森内俊之(もりうち=としゆき)が村山聖の闘争心と気迫を回想し、「勝つために必要な強い気持ち」を彼から学んだと書いています。森内俊之にも影響を与えた1歳年上の村山聖(むらやま=さとし)を深く知りたいと思いました。
著者の大崎善生(おおさき=よしお)は、日本将棋連盟に入り、「将棋マガジン」編集部を経て「将棋世界」の編集長をされた方らしく、将棋界の情報に長けており、村山聖の生い立ちから亡くなるまでを丁寧に記述されています。
5歳のときに、腎臓の難病「ネフローゼ」にかかっていることが発覚し、20歳まで生きられないと言われながら常に死と隣り合わせの中で、将棋の名人を目指すという常人では想像すらできない世界で闘い、“東の羽生、西の村山”と呼ばれながらも29歳で逝去した無冠の棋士でした。
俺もその昔、雑誌「将棋世界」を購読していた将棋好きの少年で、谷川浩司や羽生善治などのトップクラスの棋士の対局をテレビ観戦していました。しかし、村山聖に関する記憶はほとんど無く、顔つきを何となく覚えているくらいでした。本書で怪童と称された人となりを知ることになりました。何と言っても師匠となる森信雄との師弟愛は泣けます。師匠・森信雄あっての村山聖でした。師匠なのに弟子の髪の毛を洗うなど、身の回りの世話をして親子以上に深い魂レベルでの繋がりです。公式戦では、師匠が弟子に勝てなかったというのもどことなくユーモラスでユニークに感じました。
本書は、今から14年前の2000年に単行本で発行されています。村山聖の父・伸一があとがきに登場しています。父親自身が本書を読んで息子の想いを知ることができたようで、著者の計らいというか全編が愛で溢れています。生き様と同時に死に様も表裏一体で描いた名著だと思います。本書を教えてくれた友人に感謝します。
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コメント
はじめまして。偶々、「聖の青春」を読まれた記事を拝見しました。聖が生活していた舞台はどんな所だったのだろうか..と想像しながら読まれたことと思います。
小生は14年前から、村山聖に心酔し“追っかけ”をやっておりまして、ブログでマイフォト≪聖の青春≫をアップしております。アルバム形式で10余枚の写真に文章を付してビジュアルな「聖の青春」となっております。時間が許せば是非覗いてみて下さい。ブログ左右サイドバーの一番上にある当該記事(写真)をクリックして下さい。他にも、カテゴリ欄の「故村山聖九段」をクリックすると、多様な村山関係の記事をアップしております。ご笑覧下されば幸甚に存じます。 弥吉 拝
投稿: 今川 | 2014.06.03 21:00