映画『幸せの黄色いハンカチ』(お薦め度★★★)
高倉健のファンタジー映画です。
もっとも重要なエピソードが致命的です。
それは主人公の犯した殺人事件です。妻が流産して、以前の流産も知らされて自暴自虐になり、飲み屋街で酔っ払いを袋叩きにして殺してしまうという陳腐な展開は、全く説得力がありません。イライラして誤って殺人なんて健さんには似合いません。我らの健さんは、仁侠映画の場合、義理と人情の板挟みで苦悩のうえに、仕方なく罪を犯すのが鉄板です。
しかし、本作での主人公は、出所して直ぐに自分が殺めた人の墓参りをするわけでもなく、元妻に待っていくれたら黄色いハンカチを掲げておいてくれという葉書を送るという義理も人情も無い、未練がましい行動をするだけです。そこには贖罪のかけらもありません。被害者にもしも家庭があったとの設定であれば、主人公の行動は全くケシカラン話です。
本作は、あくまでも健さんと言うキャラクターに乗っかって、健さんの立場にだけ寄り添った大人の童話でしかありません。離婚に追い込んだ元妻が夕張という斜陽の町で待ち続けたという設定も現実離れしています。主人公が言うように引く手あまたの女性であれば、別の人生を歩んでいるはずです。もっとリアリティのある話にすべきでした。
と、現視点での辛口な評価をしてしまいましたが、大きな嘘をついたと感じられる映画として欠陥はあるものの、やはり本作の雰囲気は好きです。
渥美清と健さんの共演シーンから以降はウルウルになりました。寅さんと健さんの共演はそれだけで日本映画史に残る価値があります。山田洋次監督ならばこそ実現した世界です。
既に報告済みですが、健さんの一番好きな映画は『冬の華』です。どうしてもこの作品と比べると、良い映画とは思うものの、深みの無い軽さを感じてしまいます。
<作品データ>
劇場公開:1977年10月1日
製作年:1977年
製作国:日本
配給:松竹
上映時間:108分
映倫区分:G<スタッフ>
監督:山田洋次
製作:名島徹
原作:ピート=ハミル
脚本:山田洋次、朝間義隆
撮影:高羽哲夫
音楽:佐藤勝<キャスト>
島勇作:高倉健
島光枝:倍賞千恵子
小川朱実:桃井かおり
花田欽也:武田鉄矢
渡辺課長:渥美清<鑑賞チャネル>
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