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2016.07.22

松尾豊著『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』でAIの脅威が少し薄れたかも

著者は、人工知能の研究者としての立場から、レイ=カーツワイルが予想する2045年の技術的特異点(シンギュラリティ)に人工知能の歴史と現状を冷静に分析してブレーキをかけています。さらに、人工知能が危険と感じる大衆に対して専門家として不安を取り除きたいとの姿勢で臨んでいます。

本書を読んで、人工知能の不安が少し改善されました。現在のAIが脚光を浴びているのは、第3次ブームとのことです。ビックデータで広がった機械学習と、ブレークスルーであるディープラーニング(特徴表現学習)の2つが重なって生じたと解説しています。そして、「人間の知能を構成論的に理解する」という人工知能の目的からすると、未だに研究レベルでゴールとなる人間のように賢い知能をつくることはできていないと結論付けています。

将来的には人工知能は人間を超えるが、人間を征服する心配は現時点では無いと著者は述べています。

レイ=カーツワイルを実業家と紹介しているところに、研究者としてのプライドを感じるとともに、人工知能をビジネスを強調して扱うことを牽制しているようにも感じました。

しかしながら、「人工知能と軍事」という章で、軍事利用の危険性に言及しており、応用面での懸念を示してます。2014年の年末から数ヶ月で執筆された本書ですが、既にEngadgetでニュース配信された次の記事は著者の予想を超えているようにも感じます。

「戦闘機AIが空中戦シミュレーターでベテランパイロットに圧勝。無人戦闘機が空を支配する未来は近い?」

ところで、本書では人工知能を扱った映画を紹介してくれています。

①『トランセンデンス
②『her/世界でひとつの彼女
③『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』
④『2001年宇宙の旅
⑤『ターミネーター

②と③は本書で知って、すかさず鑑賞しました。どれも話題作で人工知能の理解に非常に参考になりました。お薦めです。特に②で描かれている“心を持つ人工知能”をつくることに著者は非常に懸念しています。俺も同意見です。

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